高齢者等終身サポート事業ガイドラインが示す「安心の終活支援」
はじめに
少子高齢化の進展に伴い、単身で生活する高齢者や、家族・親族による支援を得にくい方々が増加しています。
こうしたなか、「生前から死後まで」を支える終身サポート事業が全国的に広がっています。
しかしその一方で、契約内容や金銭の扱いをめぐるトラブル、事業者の突然の廃業など、
利用者が不安や不利益を被る事例も少なくありません。
こうした状況を受け、2024年6月、内閣官房・厚生労働省など8府省が連携し、
**「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」**を策定しました。
ガイドラインが取り定めていること
本ガイドラインは、法的拘束力をもたない行政上の指針ですが、
この分野の事業の健全化と利用者保護を目的として、運営上の基本原則を初めて体系的に示した点に意義があります。
ガイドラインでは、次の3つの柱が明確に打ち出されています。
- サービス提供の範囲と責任の明確化
終身サポート事業がどのような支援を対象とし、どの範囲まで関与できるのかを整理し、
利用者・事業者双方が混同しやすい領域を明確化しています。 - 契約の透明性と説明責任
契約書・重要事項説明書の作成や交付を求め、費用・預託金・解約条件・契約解除の手続きなどを
事前にわかりやすく提示することを事業者の義務としています。 - 利用者の意思の尊重と継続的支援体制
支援を受ける本人の意思能力や判断力の変化を前提に、
第三者の立会いや成年後見制度の活用など、契約締結時から終末期までの一貫した支援体制を求めています。
このように、ガイドラインは個々の業務内容ではなく、
「支援のあり方・契約のあり方・責任のあり方」という3つの観点から、
終身サポート事業の全体像を整理しています。
信頼できない事業所が存在するという現実
残念ながら、こうした指針が必要とされる背景には、実際に以下のような問題事例が存在します。
- 契約内容の説明が不十分なまま、高額な前払金や寄付金を要求される。
- 預託金の管理が不透明で、返還条件が明確でない。
- 支援内容を曖昧にしたまま、「終身」「保証」などの言葉だけが先行する。
これらはいずれも、「契約の不明確さ」と「金銭管理の不適切さ」から生じるものです。
本ガイドラインは、こうしたトラブルを未然に防ぐため、
事業の透明化と利用者保護の仕組みづくりを制度面から後押しするものといえます。
社会福祉士・行政書士としての視点
福祉・法務の専門職として地域支援に携わる立場から見ると、
本ガイドラインは「個人依存型の支援」から「組織的かつ継続的な支援」への転換を促しています。
- 一人の専門職の善意や経験に頼るのではなく、組織的な管理体制と情報共有を重視する。
- 利用者の意思を丁寧に確認し、判断能力が変化しても継続できる柔軟な契約構造を整える。
- 金銭・契約・信頼関係を見える化し、透明な支援のしくみをつくる。
これらは、社会福祉士が本来持つ「倫理性」や「中立性」を土台に、
行政書士としての「契約・法務の実務」と結びつけることで実現できる領域です。
むすび
当事業所では、本ガイドラインの趣旨に沿い、
利用者の意思を尊重しながら、契約の透明性と継続性を重視した支援を展開しています。
今後も、地域の皆さまと共に「安心して人生を託せる支援体制」の構築に努めてまいります。
